刺繍による新たな価値の創造へ。「世界に一つしかない靴下」をつくる。

―対談―
タビオ株式会社 代表取締役社長 越智 勝寛 (左)
タジマ工業株式会社 代表取締役社長 兒島 成俊 (右)

タジマグループ代表の兒島成俊が今回対談させていただいたのは、タビオ株式会社の越智勝寛社長です。同社は日本製の高品質な靴下を企画し、「靴下屋」「Tabio」などの店舗を国内外に展開しています。タジマ刺繍機と刺繍ソリューションDG.NETをどのような形でご活用いただいているのでしょうか。現在の感想や今後の展望を語っていただきました。 

タビオ株式会社 
1968年創業。「Made in Japan」にこだわり、品質の高い靴下を企画・販売している。フランチャイズチェーン「靴下屋」や直営店「靴下屋」「靴下屋UPDATE」「Tabio」「TabioMEN」を展開する。 

「自分だけのもの」を大切にする時代へ 

――タビオさんがタジマ刺繍機を採用された経緯を教えてください。 

越智

当社では以前から、「靴下屋」「Tabio」などの店頭に刺繍機を置きたいと思っていました。
コンパクトで店舗の雰囲気に合うもの、そして音が静かなものを探していたのですが、なかなか希望通りのものが見つかりませんでした。
タジマさんのご提案を受けたのは、ちょうどそんな時です。兒島社長が来られてプレゼンをしてくださったのですが、話を聞きながら、まさに自分たちの求めていたものだと感じました。 

兒島

当社が想定していたタビオさんの課題をふまえ、「うちのDG.NETと刺繍機の組み合わせでこういう課題解決ができます」という提案をさせていただきました。
そのプレゼンの途中で越智社長が「分かりました。買います!」と言われたんです。決断の早さが印象的でした。

越智

本当にタイミングが良かったんです。
抱えていた課題がたくさんあったのですが、タジマさんの刺繍機を導入することによって全部クリアできると思った瞬間、「やるしかない」と思いました。しかもオンラインでつながるということだったので、全店がつながるところを早く見たいと思いました。 
今、FCのオーナーさんに向けて順次説明しているところです。ただ、これは言葉で言うより、オーナーさんに現物を見てもらった方が早いですね。現物を見た方は感動していますよ。「自分の店に導入したい」という声をたくさんもらっています。 

兒島

ありがとうございます。 

越智

お客様の名前やイニシャル、ご自身を表すモチーフなどを刺繍することによって完成するのが、「世界に一つしかない靴下」です。
ブランドに価値を感じる人は多いですが、私は一番のブランドとは「その人自身」だと思っています。ご自身の名前などを刺繍した靴下は唯一無二のブランドになります。 
また、刺繍は劣化しにくいですし、靴下に穴があいたとしても刺繍は残ります。靴下の価値を上げるための最後のポイントは刺繍だと思うんです。大量消費の時代から少しずつ、「自分だけのもの」を大切にする流れが来ているので、これからもっといろんなものに刺繍が使われるようになると思います。 

兒島

我々としては、刺繍を通じてお客様の役に立ち、価値の向上に貢献したいと思っていた中で、良いタイミングでご縁をいただけたと思っています。本当にありがたいことです。

お客様の目に触れる場所に刺繍機を置く 

――タビオさんでは刺繍機をディスプレイの一つとして、お店の前面に出して使用されていますよね。 

越智

そうですね。
たとえば「靴下屋」の吉祥寺店がそうなんですけど、入り口のスタッフが立つところをガラス張りにして、そこに刺繍機を置いています。ご覧になったお客様は、「あんな風に刺繍をしているんだ!」と興味を持って、目が離せなくなるようです。
そういう使い方をしたいと以前から思っていたのですが、今回のご提案によって全部達成できたと思っています。 

兒島

刺繍機というのは基本的に、バックヤードに置かれてしまうものです。
その先入観があったので、タビオさんの店舗に行った時に感動しました。一番目につく通り沿いのところにあって、「こんなところに置いていただけるんですか!」と。 

越智

何か新しいことをしようと思った時、最初は変化に抵抗する意識が働くものです。
社内で刺繍を行っている部署があるのですが、初めは使い慣れた刺繍機から切り替えることに多少の抵抗がありました。でも、今は「何でもっと早く入れなかったんだろう」と言っています(笑)。 
従業員の思考の中で制限がかかっていたことが、今少しずつ外れ始めてポテンシャルが発揮されている感じですね。各店のスタッフが独自のデザインを考えて刺繍をするとか、店長の顔の特徴をつかんで刺繍にするとか、「ご当地ソックス」をつくるとか、いろんなことが始まっています。 

兒島

越智社長のお話をお聞きしていると、我々が想定していたことをはるかに超えていると感じます。
刺繍を通して従業員の方たちが楽しみながら、またいい意味で競い合いながら、ご自分たちでデザインを考えて商品にされています。ここまでの状況はちょっと想定していませんでした。「あっ、こういう切り口もあるんだ!」と学ばせていただいています。 

越智

音楽フェスにも出店していますが、ただ会場で靴下を売るだけでなく、刺繍サービスを行っているんです。
出演されたアーティストさんにとっても「私は何月何日にこのフェスに出たんだ」と記念になりますし、観客の方も記念に買って帰られます。あらかじめ刺繍されたものを買うより、その時にその場所で刺繍をする方が、記憶にも残って大事なものになります。
アーティストさんとのコラボレーションにも発展していて、さまざまな波及効果が出ています。 

兒島

タビオさんは新しい企画やプロモーションがすごく上手な企業さんだと思います。
そうした取り組みを通してタジマブランド自体の価値も高めていただいていると、つくづく感謝しています。

越智

やはり、新しい文化の土壌をつくることが重要ですね。
「刺繍を使って何をするか」と考える時、今私が考えていることだけでは限界があります。若いスタッフに実際に使ってもらいながら、新しいカルチャーに対応するものをつくってほしいと思っています。
もっともっと刺繍の可能性が広がっていくと思いますよ。 

パートナーとして高め合っていける関係 

――タビオさんのものづくりのこだわりについても教えてください。靴下に対してどのようなこだわりを注がれてきたのでしょうか。 

越智

当社の経営理念に「不易流行」という言葉があります。「変えてはいけないもの」と「革新的に変えていくもの」を両立しようという意味です。当社はスポーツソックスのようなハイテクな商品もつくっていますが、無地ソックスについては昔からのものづくりを維持しています。また、技術的にこだわった新商品でもベーシックな機能はちゃんとつけるようにしていて、素材が進化したり滑り止めの場所を変えたりしても、履き心地は変わらないようにしています。
効率が重視される世の中ですが、当社は創業以来のものづくりを大切に守っています。 
また、私は会長(創業者の越智直正氏)から「覇道ではなく王道でいくように」と言われてきました。値段を安くしてCMをたくさん流して浸透させる・・・というやり方が覇道だとしたら、王道というのは「売る側」と「つくる側」の双方を大切にして国益になる仕事をするという意味です。
たとえば、中国で製品をつくって日本で売ることを続けると、日本国内の産業は衰退せざるを得ません。でも日本でものづくりを続ければ、日本の産業の永続につながりますし、産業は雇用を生むのでGDPアップにもつながります。
だから当社は「日本製」にこだわりを持ち、産業と経済の両立を大切にしています。 

――越智社長からタジマグループに期待されることがあれば教えてください。 

越智

刺繍の文化を根付かせるために、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
日本中のアパレルや服飾雑貨などさまざまなお店に刺繍機があって、誰もが気軽に自分の好きな刺繍を入れられるような、そういう刺繍の文化が根付くことを期待しています。
今まで日の当たらなかった産業が刺繍によって活性化するなど、日本の産業を守ることにもつながると思います。 

兒島

まさに我々も、日本のメーカーとして日本の発展に貢献したいという思いがありますし、刺繍を文化としてさらに発展させていきたいと思っています。
タビオさんは当社のお客様ですが、パートナーとして一緒に高め合っていける関係だと、今日のお話を聞いて感じました。そういう関係を築けることが、本当にありがたいと思います。 

越智

タジマさんの宣伝に使っていただけるように、うちも頑張ります。
まずは、靴下という文化をもう少し成熟させることに力を入れたいと思います。たとえばメンズの化粧品って昔は価値を認知されていなかったですが、ここ数年でいろんな商品が店に並ぶようになりましたよね。それと同じように、靴下にももっと多くの人がこだわりを持ってほしいと思います。 
スーツに自分のイニシャルを入れたりしますが、あれによって「自分のもの」という愛着が生まれます。それと同じで靴下に刺繍をして自分のこだわりを込めると、違った価値を感じられるようになると思います。
そうして靴下の価値を高めるために、刺繍を活用させていただいているところです。刺繍には、それだけ大きなポテンシャルがあると思っています。 

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