その試みは、正解のない問題に向き合うことを意味する。先端事業推進部の加藤さんが取り組んでいるのは、次のタジマグループを支える技術開発である。 
学生時代、「機械」と「材料」という2つの対象に興味を持っていた加藤さんは、自分の専門性を活かす就職先としてTISMを選んだ。「日々の成長を実感しています」という口調から伝わってくるのは、開発者としての順調な仕事ぶりだ。未知の技術を追求する、仕事のやりがいを聞いた。 

「電気を通す糸」で何ができる? 

CFRP(炭素繊維強化プラスチック)の研究をしていた学生時代、所属した研究室で使われていたのがタジマ刺繍機だった。その機械に触れて興味を持ったことが、進路を決めるきっかけになる。刺繍機の可能性や奥深さを感じ、TISMに入社した。 

入社後、加藤さんが配属されたのは、先端事業推進部。ここでは、新たな事業の創出につながる先端領域の技術開発が行われている。その中の一つ、「スマートテキスタイル事業」として取り組むのが、先端材料である導電糸(電気を通す糸)を使ったものづくりだ。「導電糸の使用例として、最近注目を集めているウェアラブルがあります。たとえば、着ることによって血圧や心拍など人の体の情報が得られるような製品が考えられます」。現在、導電糸を使ったサンプル品の試作や、提案業務などを行っている。 

お客様の課題を把握する力

加藤さんが携わるもう一つの事業が、TFP事業だ。基材上に強化繊維を縫いとめてプリフォーム(中間基材)を形成する、「TFP工法」という工法を扱っている。「織物などのシート材を使う従来の工法と比べると、廃棄する材料が少なくなります。また、『こちらの方向に対する強度がほしい』という要求がある時に、ピンポイントで強化繊維を割り当てて強度を高めることができます」と、特長を説明する。 

TFP工法を使った試作に力を注ぐ加藤さんだが、役割はそれだけではない。試作の結果を資料にまとめ、顧客に伝えることも重要な業務だ。そのためにはまず、顧客とコミュニケーションを重ね、抱えている課題を把握することが必要になる。 

常に最先端を知る努力を

「お客様の課題を引き出すことができれば、それを解決するために提案するべきことも見えてきます」と話す加藤さん。課題を把握した後は、解決策を導き出して迅速に提案する。その結果、喜んでくれる姿を見ることが、仕事のモチベーションになっている。「お客様が私を頼ってくださり、『こういうことができないですか?』と聞いていただけることもあります。『次はこういう点を工夫して作ろう』と燃える場面です」。 

顧客の期待に応え続けるために意識しているのが、日々の情報収集だ。特に最先端の技術を知るために、学会や研究会にも積極的に参加している。TISMの新たな柱となる事業を生み出すための探究は、今後さらに加速していく。 

営業・企画部門 先端事業推進部 加藤 大貴 

1997年生まれ 
2020年入社 
大学時代の卒業研究でタジマ刺繍機を使用。 
その経験が入社のきっかけとなる。 
先端事業推進部で最先端の技術開発に取り組む中で、 
技術とコミュニケーション力を磨いている。